結婚当日に夫が愛人を紹介してきたから、ヤケで愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
 私が「お義父様」と呼んだせいか、上機嫌になった公爵はさらにアーヴィンに話しかける。
「殿下は、学園卒業後は諸国を見て回っていたと聞いておりましたが、陛下もその辺りは詳しく教えてくださらないもので」
「そりゃそうだろう。なにより放浪の旅。兄上にとっては俺の存在など話題にされるのも嫌だろうよ。でも、今日は……二人の結婚式だと聞いたからね。慌てて戻って駆けつけたというわけだ」
「そうしますと、これが終わればまたどこかに……?」
 探るような公爵の視線を、アーヴィンはさらりと受け流す。
「どこかに行くかもしれないし、行かないかもしれない。何も考えていないからな」
 ははっとアーヴィンが笑えば、公爵も「そういうところは殿下らしいですな」と近くにいた給仕からグラスを受け取り、アーヴィンへと手渡す。グラスを受け取ったアーヴィンは、一口だけ口に含んですぐに給仕のトレイへと戻した。
「せっかくだから、一曲くらい踊りたいと思っていてね。公爵、イレーヌ嬢……いや、ロンペル子爵夫人を借りてもいいかな?」
 結婚を機に、シオドアはポーレット公爵が持つ爵位の一つを受け継いだ。それがロンペル子爵であり、新婚生活のためにと別邸も用意してもらっているのだ。その離れにまさかシオドアが愛人を囲うとは誰も思っていないだろう。
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