結婚当日に夫が愛人を紹介してきたから、ヤケで愛人募集したら王弟殿下が志願してきた件。
 本来であれば、このパーティーの後は、私とシオドアは別邸に戻るはずなのだが、先ほどの様子を見ていたらどうなるかわからない。
「どうぞ」
 公爵は私に目配せて、アーヴィンの言うとおりにするようにと訴えてくる。
 公爵はアーヴィンを懐柔したいのだ。学園を卒業してからずっと国外にいて、戻ってきたばかりの王弟は、国内の情勢に疎いとでも考えているのか。
「イレーヌ……いや、ロンペル子爵夫人。一曲、お相手願えるだろうか」
「えぇ、喜んで」
 アーヴィンと踊るのは、学園の卒業パーティー以来。パーティーではアーヴィンや後輩たちにやられたという思いはあったけれど、それでもあの時間は私にとっては忘れられない、心の支えとなるような思い出でもあった。
 だけど今は違う。
 仕組まれたわけでも騙されたわけでもなく、私が自ら彼の手を取った。
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