御曹司の溺甘庇護欲が最愛妻と双子を取り戻す
偽装パートナー契約

「渚(なぎさ)」

優しい声で名前を呼ばれて顔を上げた次の瞬間、彼に唇を奪われて目を丸くした。

チョコレートブラウンの美々しい瞳がぼやける距離にあり、高い鼻先が渚の頬に触れている。

少し冷たく滑らかな感触を唇に感じて、頭が真っ白になった。

(私、キスされてるの……?)

「やめろ!」

目の前にいる元夫が声を荒げた。

「妻にキスをしてなにが悪い?」

「渚は俺の――」

「お前は赤の他人で、夫は俺だ。俺の妻に二度と接触してくるな」

わかっている。

亡き親友の妹だから、こうして夫のふりをして助けてくれるのだということが。

それでもどうしようもなく胸が高鳴って、惹かれる気持ちを止められない。

(あなたが好きです。この気持ち、どうしたらいいのか教えてください……)



* * *



ここはイタリアンレストラン『レバロ』。

都内に建つ商業ビルの一階に店を構えている人気店だ。

水沢(みずさわ)渚はソムリエエプロン姿で閉店後の店内清掃をしている。

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