御曹司の溺甘庇護欲が最愛妻と双子を取り戻す
広々としていてグランドピアノが存在感たっぷりに置かれている。

高級ホテルのスイートルームを思わせる洗練されたインテリアに、庶民の渚は気後れした。

「し、失礼いたします」

ソファにひとりだけ座っている依頼者に緊張しながら声をかけた。

スッと立ち上がって振り返った女性は、五十代半ばくらいの年齢だろうか。

家政婦が「奥様」と呼んで掃除業者が来たことを伝えてくれた。

ミディアムヘアの長身でモデルのようにスタイルがよく、かなりの美人だ。

アーモンド形の美麗な目を見て確信する。

(宏斗さんに目元がそっくり。きっとお母様だ)

さらに動悸が加速し、自分の心音が聞こえるほどである。

動揺する渚の前に立った宏斗の母が、優雅な笑みを口元に浮かべた。

「お掃除の方ね。ご苦労様です」

(えっ? 私が宏斗さんの恋人だと気づいていないみたい……)

本当にただの偶然だったのか。

そう思うとホッとして、緊張を半分ほどに減らせた。

「吉見クリーンサポートの水沢と申します。本日はよろしくお願いいたします」

この場で宏斗と交際している話はしない方がいいだろう。

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