御曹司の溺甘庇護欲が最愛妻と双子を取り戻す
聞き覚えのあるその声にハッとすると同時に、目の前に黒いコート姿の男性が現れた。

(宏斗さん!?)

「私の妻です。すみませんが、どなたかタクシーを止めていただけますか?」

宏斗に頼まれた通行人のひとりが、空車で走っていたタクシーをすぐに止めてくれた。

「ど、どうして……」

痛みに顔をしかめつつ震える声で問うと、彼が切なげに微笑んだ。

「説明はあとで。病院へ急ごう。通院中の産婦人科はどこ?」

かなり体重が増えた渚を宏斗が軽々と横抱きに抱え上げた。

タクシーに乗せられて、産婦人科の病院へ向かう。

見つかってしまったことに焦っても、今はなにもできない。

強い子宮の張りを感じ、陣痛が始まってしまったのではないかと恐怖した。

「お腹が張って……どうしよう。今、生まれたら早すぎるのに」

片手をお腹に、もう一方の手で無意識に宏斗の手をぎゅっと掴んだ。

その手を握り返してくれる宏斗が、渚の代わりに産婦人科へ電話をかけ状況を伝えてくれていた。

ひとりならきっと冷静に対処できなかっただろう。

五分ほどで病院に着くと、夜間出入口から看護師が出てきて車いすに乗せられた。

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