御曹司の溺甘庇護欲が最愛妻と双子を取り戻す
彼は強く頼もしい人だ。突然の別れに傷ついてもすぐに立ち直って、夢に向かって邁進していることだろう。

(夢を叶えて幸せになってください)

彼の成功を祈った時、雪道で足を滑らせ尻もちをついてしまった。

「うっ……」

痛みが尾てい骨から背骨を通り、頭まで突き抜けた。

(お腹の赤ちゃんは!?)

真っ先に心配したのは愛しい我が子たちだ。

妊娠しているから不安になるが、落ち込んでいてはダメだと前を向かせてくれる強力な味方でもある。

家族のいない渚にとってかけがえのない存在で、絶対に失いたくない。

(ごめんね。どうしよう。赤ちゃんも痛がっているかも)

「大丈夫ですか?」

立てずにいると、通りかかった見知らぬ女性が声をかけてくれた。

大丈夫と言えず、お腹を押さえて首を横に振った。

「転んだの? 妊婦さんじゃないか」

「救急車、呼びますか?」

周囲に十人ほどの通行人が集まってきて、口々に心配してくれる。

痛みと赤ちゃんへの心配、それに恥ずかしさが加わって慌てていた。

その時、人垣の後ろから「通してください」と声がした。

< 171 / 222 >

この作品をシェア

pagetop