御曹司の溺甘庇護欲が最愛妻と双子を取り戻す
秘密の契約がくすぐったい。

明日も見えない窮地に立たされていたはずなのに、気づけば笑顔になっていた。


* * *


都内の商業ビルが建ち並んだエリアに、ISSIKI自動車の東京本社がある。

十五階建てのこのビルで働くのは三千人ほどだが、愛知と九州の本社や支店、グループ会社を含めた総従業員数は三十八万人を超えている。

国内自動車メーカーは三つの企業がしのぎを削っており、ISSIKIはそのひとつだ。

九時に出社した宏斗は最上階にある執務室でメールのチェックから仕事を始める。

(ジェンキンス? ああ、セントルイス工場の責任者か。俺に直接連絡してきたということは、問題なしとしていた視察報告書の方に問題があるようだな。懸案事項としておこう。次は――)

『日祥LSIデザイン』という会社から送られてきたメールを開く。

(ああ。この前、挨拶に来た委託先の社長か。新型EV車の開発の)

内容は面会のお礼だけなので閉じたが、引っかかりを覚えて再度開いた。

(その社名……そうか。あの男の勤務先だ)

渚の元夫、岩淵繁史のことだ。

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