御曹司の溺甘庇護欲が最愛妻と双子を取り戻す
友人たちにメッセージを返しながら、幸せだった幼い日を思い出していた。

父は役所勤めの公務員で、母は飲食店で週に三日パートをしていた。

休日は家族でショッピングモールに行き、フードコートで食事をするのが楽しみだった。

兄の競泳の大会も家族みんなで応援にいき、近所の人に『いつも家族でおでかけして仲がいいですね』と言われていた。

よくありそうな平凡で幸せな四人家族で、ずっと家族で笑っていられると信じていたのに、ひとりぼっちになってしまった。

(お父さん、お母さん、お兄ちゃん、寂しいよ……)

しんみりした気分を変えたくて、丁寧に時間をかけて残りの掃除に励む。

汗ばむほどにあちこちを磨き上げ、家中をピカピカにして満足した。

紅茶を飲みながらソファで休憩していると、また携帯が鳴った。

画面には知らないアイコンとイニシャルが表示されている。

きっと元クラスメイトのうちの誰かだろうと思って電話に出た。

「もしもし」

『俺だ。逃げ回りやがって。手間をかけさせるな』

一瞬で血の気が引く。繁史の声だったからだ。

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