御曹司の溺甘庇護欲が最愛妻と双子を取り戻す
繁史はよほど宏斗が怖いのか、まだ頭を下げている。

渚は宏斗に肩を抱かれて会議室を出た。

それから三十分ほどしてタクシーで自宅に帰ってきた。

宏斗がコーヒーを淹れてくれてソファに並んで座る。

「落ちついた?」

「はい。泣いてしまってすみませんでした」

まだ乾いていない瞳で頭を下げる。

「あんな場所でいきなり出くわしたんだから無理もない。怖い思いをさせてすまなかった」

「そんな。宏斗さんは少しも悪くないです。すぐに助けてくださって本当にありがとうございました」

無理して笑みを作ると、大きな手が渚の頭をポンポンと叩いた。

「渚ちゃんは優しいな。まぁ、これで解決だと思えば悪くない。ひとりで外出できないのは苦痛だろうから、来月まで待たせなくてすんだのはよかった。これで自由が戻ったよ」

宏斗がコーヒーをひと口飲んで息をついた。

(自由……。そっか。私だけじゃなく、宏斗さんもだ)

渚を守るという重荷を下ろせて彼にも自由が戻った。

きっとホッとしていることだろう。

(これ以上、負担をかけてはいけない。なるべく早くここを出よう。離れたくないなんて絶対に言えない)

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