御曹司の溺甘庇護欲が最愛妻と双子を取り戻す
膝の上の手をきつく握りしめ、精一杯の笑顔を向けた。

「力になってくださってありがとうございました。宏斗さんには言葉にできないほど感謝しています。私、明日の朝、自分の家に帰ります」

なぜか宏斗の顔が曇った。

離れたくない気持ちと闘いながら話しているので、彼の表情の意味を考えている余裕はない。

(泣いたらダメ。心配させてしまう)

もうすぐお別れだと思うとつらすぎて目を合わせていられなくなり、ソファから立ち上がった。

「夕食、作りますね」

彼のために夕食を作れる機会はこれが最後だ。

張り切っていた弁当も結局一度しか作れず、ここを去らなければならない。

(もっと作りたかった。宏斗さんの役に立てる唯一の方法だったのに、こんなに早く終わりが来るなんて)

「買い物に行かなかったので簡単メニューになってしまいますけど――」

瞬きをして潤んでくる目を乾かそうとした。

顔を見られないように爪先をキッチンへと向けたその時、突然背中から抱きしめられた。

心臓が口から飛び出しそうなほどに驚いて、体に回されるたくましい腕に戸惑う。

(どうして、抱きしめてくれるの……?)

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