泡のような世界で君と恋をする
「……ここで、生きられる?」

 自分でも驚くほど、小さな声だった。

 ルシアは即答しなかった。
 少しだけ間を置いてから、言う。

「生きさせる」

 それは、優しい言葉じゃない。
 でも、拒絶でもない。

「それが、僕の役目だから」

 役目。

 その言葉の奥に、重たいものが沈んでいる気がした。

 ――昔、何かがあった。
 人と海の間で。

 でも、それを聞く勇気は、今はなかった。

 ただ分かるのは一つ。

 この泡のような世界で、
 私はもう、名前ごと掴まれてしまったのだということ。
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