初恋の君は、闇を抱く。
ヒーローの仮面――Eve Side――
――Eve side――
ゼロ番の夜は、基本うるさい。
笑い声も、怒鳴り声も、誰かのため息も混ざって、全部が雑音になる。
なのに。
あいつが名前を口にした瞬間だけ、
音が消えた。
「〝凪〟って呼んで?」
胸の奥に沈めていた記憶が一気に浮き上がる。
――凪。
何度この名前を呼んだことか。
夕方の公園で、ランドセルを背負ったまま。
「凪!おっせーな。早く来いよ」
「置いて行かないでよ!」
そんな声まではっきり蘇る。
……やっぱり。
別人なわけがなかった。
声も目も、少し困った時に口元を噛む癖も。
変わったのは背丈と、俺の立ち位置だけだ。
「……凪か」
思わず口にしてしまった。
声に出しただけで、喉がひりつく。
もうこの名前を呼ぶことはないと思っていたのに。
ここで俺が〝一颯〟だとバレたら。
凪の中での俺が壊れる気がした。
こんな落ちた〝一颯〟を知ってほしくない。