初恋の君は、闇を抱く。
だから、知らないふりをした。
「珍しい名前だな」
最低な誤魔化しだって、わかってる。
でも、凪は少しだけ笑って、
「よく言われる」って答えた。
……それでいい。
それで、よかった。
俺は視線を逸らして、缶コーヒーを一口飲んだ。
甘い。
凪が微笑んでくるから、余計に甘く感じるのか。
「……俺さ」
呼びたかった。
名前を。
昔みたいに。
でも、その一言を飲み込んで、
「なんでもない」
って言った。
凪が不思議そうな顔をする。
その表情が、昔と変わらなくて。
――会わなきゃよかった。
もう一度会ったら、こうなるってわかってた。
俺は無意識に、腕の刺青を押さえる。
〝aoi〟
お前を失って、
凪まで失う気はない。
なんでここにいるんだよ……。
凪はこんなところにいるやつじゃないだろ。
でもここはゼロ番。
理由を聞かれずにいられる場所だ。
俺に問いかける資格はない。