初恋の君は、闇を抱く。
振り向かなくても、誰なのかわかる。
「ここ、誰かを試す場所じゃねぇだろ」
イブはこちらを全く見ずに、私とモカの間に立っただけ。
「嫌な思いさせるために来てるなら、帰れ」
静かな声なのに、逆らえない圧があった。
モカは一瞬だけ唇を噛んで、
肩をすくめる。
「……はいはい。怖」
そう言って去って行った。
周りのざわめきも、少しずつ引いていく。
しばらく、誰も何も言わなかった。
「大丈夫か」
イブが私を見ないまま言う。
名前は呼ばれない。
それでも、ちゃんと私に向けられた言葉だった。
「……うん」
それだけで精一杯。
「ならいい」
そう言い、イブは私から少し距離を取る。
近づいてくれたわけじゃない。
触れてもいない。
それなのに――
私の世界は、さっきより少しだけ、守られている気がした。
ゼロ番は揺れている。
噂も、感情も。
そして私の気持ちも。