初恋の君は、闇を抱く。
それにしても、イブの指が離れたというのに頬の感覚だけはいつまでも消えなくて。
触れられたのはほんの一瞬だったのに、胸のドキドキが鳴り止まない。
どうしてこんなに落ち着かないんだろう。
「相変わらず、距離感バグってるね」
不意に、違う声が割り込んできた。
落ち着いてて優しい声。
顔を上げるとそこに立っていたのはさっきまでいなかった女の人だった。
長い髪に、整った顔立ち。
派手じゃないのに、目だけがやけに強い。
「紗夜……」
イブの声がハッキリ変わった。
さっきまでの柔らかさが消えて、一気に硬くなる。
「その子って……例の?」
紗夜は私ではなく、イブを見たまま言った。
……例のって?
胸が小さく跳ねる。
「はぁ……用がねーなら帰れ」
イブの言い方は少し刺々しい。
紗夜はそれを気にも留めず、ゆっくり視線を私に向けた。
一瞬……
測るみたいな視線。
敵意でも好意でもない。
ただ――見られている、という感覚。