初恋の君は、闇を抱く。

「ただいま」

そう言っても返事はない。

廊下からそっとリビングを覗くと、7歳の弟、瑠依(るい)が父と義母に笑顔で話をし、それに対して笑っている様子が見えた。

それはとても幸せそうな家族そのもので。

ここに自分が加わると、空気が変わる。

「あ!お姉ちゃん!」

瑠依が私に気付いてリビングのドアを開ける。

「瑠依、ただいま」

「おかえりー!今日は早かったんだね!」

無邪気に笑う瑠依は天使のようだ。

この家で唯一私に本音でぶつかってきてくれる子。

「おかえりなさい、ご飯は?」

義母が私に聞いてくる。

笑顔だけど、笑顔じゃない。

私に向ける時だけ、どこか距離がある。


……私は聞いてしまったんだ。

それは瑠依が生まれてすぐの頃。

誰かと電話していて……


『あの子、私を本当の母親だと思ってないのよ、私を見る目が怖いの。ほんと嫌な気持ちになる……早く大きくなって出て行ってほしいわ』

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