闇底の純愛



電気を消して、布団に入る。

それから、隣で横になっている京に声をかけた。



「京。明日休みだから、私起きるの9時頃になると思う。起こさないでね。朝ごはんも作らなくて大丈夫だから。」


「……ん...」


「京?聞いてる?」

「……」


ほぼ唸り声みたいな声に不安になって問い返すと、返事の変わりに寝息が聞こえてきた。


「……はぁ」

話しかけることを諦めてため息をつき、私も目を瞑る。


けれど、なかなか眠くならなくて、もう一度目を開けた。

京は私の方を向いて眠っている。

仰向けのまま、そっと顔だけ動かして、京の方を見る。



あどけない寝顔。


無駄に整ったその顔は、眠っていても、何をしても絵になっていた。

まぶたを縁取る長いまつ毛が、呼吸に合わせてかすかに揺れる。

普段、学校で薄く笑っているその口も、今は力が抜けて小さく開いていた。

くすんだ灰色の髪はさらさらで、柔らかそう。


そっと、手を伸ばしてみる。

ほんの少しだけ。

撫でるというほどでもなく、毛先にそっと触れるだけ。


私のと全く違うその感覚が気に入って、もう一度。

今度は梳くように指を滑らせた。


細いその髪は、すぐに私の指をするすると通り抜けていく。



それを何度か繰り返していると、京がもぞ、と身動ぎした。

思わずびくりと肩が跳ね、手を止める。


けれど京は、その手に頭を擦り付けるように身を寄せてきた。


起きてはいない。

多分、無意識だ。


胸の奥でそっと息をつき、もう何度か頭を撫でてから、静かに手を引っ込めた。





+++


< 27 / 29 >

この作品をシェア

pagetop