闇底の純愛
車が通り過ぎる音。
子供の甲高い笑い声。
紙の上を、かりかりとシャーペンが走る静かな音。
それらが、ぼんやりと耳に届く。
うっすら目を開け、瞳だけを動かして周りを見る。
もう日が高く登っているのか、部屋が全体的に明るい。
カーテンから差し込む光が眩しかった。
少し視線を下げると、床に座った京がローテーブルに向かい、シャーペンを動かしてるのが見える。
もぞもぞと身じろぎして布団を引っ張りあげ、そのまま顔を埋めた。
布団の中のぬくもりに幸せを感じながら、再び目を閉じる。
「...酔ちゃん?起きた?」
その声で、二度寝しかけていた意識が引き戻される。
返事をするのが億劫で、布団に顔を埋めたまま、目だけを出す。
片目だけ開けると、ベッドの縁に肘をつき、頬杖をついた京とばっちり目が合う。
上から覗き込むような体勢で、私の顔をじっと見ている。
「……なに」
掠れた声でそう言うと、京はくすっと小さく笑った。
「やっぱ起きてた。おはよー、酔ちゃん」
にっこり。
寝起きの目には眩しすぎる爽やかスマイルを至近距離で浴びてしまい、私は反射的に頭まで布団を引っ張り上げた。
「酔ちゃーん、隠れないでー。出てきてー」
ぐりぐりと、軽い力で布団が少しずつ下げられる。
じとりと京を睨みつけると、京はしょぼんと眉を下げて下げて言った。
「酔ちゃん……数学、おしえて...?」
「……」
再び布団をずりずり引き上げる。
「...教えてくれたら、フレンチトーストつくってあげる」
ぴたっ
「……………どこが分かんないの」