この恋に名前をつけるとするならば
そして、"アッシュリーガル"のステージはあっという間に終わってしまい、メンバーたちが「ありがとうございました!」と言いながら、ステージ横へはけて行く。
ファンの人たちは「アンコール!アンコール!」とステージに向かって叫び続け、わたしはそれを遠目から見るような気持ちで呆然としていた。
すると、後ろから誰かに腕を掴まれ、わたしは驚きハッと振り返る。
そこに立っていたのは、スタッフジャンパーを着て、フウドを深く被り顔を隠す郁人さんの姿だった。
「来て。」
小声でそう囁き、わたしの腕を引いて歩き出す郁人さん。
わたしは郁人さんに連れられ、"staff only"の扉から裏側へ入ると、"アッシュリーガル"の楽屋へと案内された。
「ほーら、命。連れて来たぞー。」
フウドを外し、楽屋内に向かってそう言う郁人さん。
そこには、ステージに立っていた時とは違うTシャツに着替えた命くんの姿があった。
命くんはわたしの姿を見ると、真っ先に駆け寄り、そして思い切りわたしを抱き締めてくれたのだ。
「麗月さん、会いたかった。」
嬉しさを絞り出すような命くんの声にわたしの胸はギュッと締め付けられた。
「ちょっと馬鹿アニキ!!!何でこの女連れて来たのよ!!!」
当然のように怒り出す芽衣さんに、「だって、俺が行かないと、命が行っちまうじゃん。こいつがあの中に行くのは危険過ぎるから。」と冷静に言いながら、郁人さんはスタッフジャンパーを脱いでいた。
「てゆうか!さっきから抱き合ってんじゃないわよ!!!早く離れなさいよねぇ?!」
そう言って、芽衣さんは命くんとわたしの間に割って入って来た。
「何だよ、もう少し感動の再会に浸らせろよぉ。」
「何が感動の再会よ!バッカじゃないの?!」
目の前でそう言い合う命くんと芽衣さん。
その間もわたしの身体には命くんの温もりが残っており、離れた今でも抱き締められているような感覚が残っていた。