この恋に名前をつけるとするならば

「そうなんですか?」
「命は、全く芽衣を相手にしてないよ。見てて分かるでしょ?」

そう言われ、何と返していいか分からずに黙り込むわたし。

すると郁人さんは「芽衣がうちのバンドに入るって言い出したのも、命が目当てだったからなんだ。」と言い、"アッシュリーガル"の結成について話してくれた。

高校が一緒だった命くん、郁人さん、春輝さんは元々ただの趣味の一環としてバンド活動をしていたらしい。
そこである時、文化祭で3人のパフォーマンスを披露した途端、校内だけではなく他校にも一気に広まり、ファンクラブが出来るほどになってしまったんだとか。

その中でも当時から圧倒的に人気を誇っていたのは命くんだった。

高校卒業後、元々命くんの追っかけだった芽衣さんが郁人さんの双子の妹という特権を利用し、強引に加入する形となり、今の4人体制になったという。

「芽衣さんって、そんなに前から命くんの事が好きなんですね。」
「あいつもしつけーよなぁ。全く相手にされてないのに、よく諦めずにいるよ。」
「でも凄いなぁ···、一人の人をそんなにずっと想い続けられるなんて。」

わたしがしみじみそう言うと、郁人さんは「芽衣の場合は執着心が半端ないだけな気がするけど。」と苦笑いを浮かべていた。

「でも麗月さん。芽衣に気を遣う必要ないっすからね。」
「えっ?」
「麗月さんも、命のこと、好きなんでしょ?」

あまりにもストレートな郁人さんの質問に、顔が熱くなっていく。

すると郁人さんは「あ、ストレート過ぎましたね。」と言って笑い、それから「でも······」と話を続けた。

「命は、麗月さんに本気みたいなんで。あいつ昔からモテてきましたけど、興味ない奴には本当に興味示なさないんすよ。命があんなに麗月さんに真っ直ぐって事は、命は本気なんだって、信じてやってください。」

郁人さんはそう言うと、呟くように「よろしくお願いしますね。」と言い、わたしはまだ夢をみているような感覚で「···はい」と返事をした。
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