この恋に名前をつけるとするならば
わたしの自宅アパートから郁人さんの車で走る事30分。
「着いたぞー。」
到着したの、背の高い灰色のマンションの前だった。
「命は、ここの8階に住んでる。」
そう言って運転席から降りる郁人さん。
そしてわたしは郁人さんに続き、そのマンションの8階までエレベーターで上って行った。
郁人さんは8階に到着すると、803号室のインターホンを押し、返答がある前にドアノブに手を掛け、玄関のドアを開けた。
「命ー、お姫様をお連れしたぞー。」
家の中に向かってそう叫んだ郁人さんは、「じゃあ、俺の役目はここまでだから。ごゆっくり。」と言うと、再びエレベーターに乗り、行ってしまった。
すると、家の中から足音が聞こえてきて、わたしは振り返る。
「麗月さん!いらっしゃい!」
そう言って部屋の奥からやって来たのは、スウェット姿の命くんだった。
「お邪魔します。」
「どうぞ、入ってください。」
命くんに促され、部屋の中へと上がるわたし。
初めて入る命くんの部屋は、たくさんのギターやベースが並んでおり、曲作りに使うのであろう機材やパソコンが揃えられていて、まさにミュージシャンの部屋といった感じだった。
「わぁ···凄いね。」
「そうっすか?まぁ、座ってください!」
わたしは部屋の中央に置かれたダークグレーのソファーにそっと腰を掛けると、部屋の中を見回した。
「飲み物、アップルティーでいいですか?」
命くんはそう言って、わたしがよく飲んでいる午前の紅茶のアップルティーを冷蔵庫から取り出した。
「うん、ありがとう。」
「何か自分んちに麗月さんが居るって、緊張するなぁ。」
「わたしも緊張してるよ?」
そう言って笑い合うわたしたち。
命くんはアップルティーのキャップを開けてから、それをわたしに差し出し、わたしの隣に腰を下ろした。