最愛の灯を吹き消す頃に。
「お邪魔します」

広い玄関からリビングまでは廊下で繋がっていて、いくつかのドアがあった。
それぞれに誰の部屋なのか分かるプレートが掛かっている。
エマちゃんの一人部屋まであるみたいで、まだ四歳なのに凄いなと思った。

リビングはワンフロアで開放的な造りになっている。
白を基調とした壁紙や家具、カーテン。
美術絵画も飾っていて、なんだか私には敷居の高いおうちに思えてくる。

収納スペースが多いのか、一般家庭で馴染みのあるような日用品や生活雑貨などはあまり視界に入ってこない。
そのせいか、なんとなく生活感が感じられなかった。
まるで入居希望者に披露するためのモデルルームみたいだ。

「いいなぁ。きれいなおうちだね」

「物が無いだけだよ」

「そうなの?収納スペースがおっきいんだと思ってた」

「うち、転勤族だから。物が多いと大変なんだ」

「じゃあ転校も初めてじゃないんだ」

「中学生になってからは初めて。小学校の時に県内だったけど一回引っ越してるよ」

「大変だね」

「父親が高校教師なんだ。高校って異動自体はあんまり無いらしいけど。たまにね」

「へぇ。なんの先生なの」

「美術」

物が多いと引っ越しの時に大変なのに絵画なんかは率先して飾る理由が分かった気がした。
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