最愛の灯を吹き消す頃に。
落下した掛け時計は幸い破損してはないけれど、カチ、カチと音だけを鳴らしながら秒針が僅かに振れるだけで進まない。
故障してしまったのだろう。

「なんで分かったの」

「たまたまだってば」

「心臓って何」

「だからそれは…」

「急にそんなこと言うのも時計のこと見抜けたのも不自然だよ」

「そう、だけど」

ジッと私を見据える元宮契の瞳から目が離せない。
全てを見透かされるような瞳。
私よりもずっとずっと、見えないはずのものが見えているんじゃないかと思えてくる。

逃げられないと思った。
それと同時に、もういいかとさえ思えた。

ここで彼にどう思われようと出逢ってからたった一日の関係性だ。
失うものなんてない。
教室で隣同士に座ってちょっと気まずくなるだけ。
授業中さえ我慢していればあとは無視していればいい。

その後に元宮契がクラス中にバラしたとしても、そんなこと信じる人なんてきっと居ない。
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