最愛の灯を吹き消す頃に。
「なんでやり返さないの。だって今の元宮くんなら」

「きっと力ではもう負けないと思うよ。やり返せば母さんに怪我をさせてしまうくらいには…。でもそれができるってさ…」

「うん」

「母さんのこと、好きじゃないみたいじゃんか」

絞り出すように掠れた音で言った元宮契の声が悲しい。

「お母さんのこと好きだから傷つけたくないんだね」

「何度も抵抗してやろうと思ったよ。でもできなかった。一度やってしまうときっと歯止めが効かなくなる。俺が力で抵抗するたびに優しかった母さんとの思い出も一個ずつ自分の手で壊していっちゃうみたいでさ。怖いんだ…完璧に母さんとの繋がりが失くなってしまうみたいでさ」

「じゃあ元宮くんはどこに救いを求めればいいの。助けてって一番に叫びたいのは家族なのに」

助けて。

なんで私には見えてしまうの。

知らない人達の、知らない人生の終焉(しゅうえん)がテールランプのように、網膜に張り付いたみたいに点滅している。

助けて。
そう叫びたいのに、それを言葉にしてしまうと今度こそ家族サークルの一員ではいられなくなってしまうようで怖い。

元宮契の叫びはどこへ。
誰が受け止めてくれるのだろう。
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