最愛の灯を吹き消す頃に。
「そんなの悲しいよ…」

「ふふ。ありがとう」

「でもそれでも、それとおんなじくらい、生きなきゃいけないって思ってるのはどうして?」

「んー。ちょっと恥ずかしいけど。夢があるんだ」

「夢?」

「そう。唯一俺が存在証明を、小さい世界だけじゃなくてひょっとしたらでっかいスケールで存在証明ができそうな夢」

「教えて欲しいな」

「ん。俺ね、小説家になりたいの」

「小説家?」

「気づいたら俺の逃げ場所は小説だった。悲しい、やるせない、惨め。そんな感情に押し潰れされそうな時はただ一人で黙々と小説を読んだ。ページを捲るたびに俺はここじゃないどこかに行ける。知らない誰かになれる。小説は俺を現実から連れ出してくれた。俺がそう思うなら、その感情ってきっと俺だけが抱えてるものじゃないと思うんだ。きっとどこかにそういう救いを待ってる人がきっと居る。だから俺がそうなれたらいいなって」

「素敵。すごく、とても素敵」

「照れるでしょーが」

「本当に素敵だよ。絶対叶えて欲しい。その世界を私も見たいよ」

「真中さんも?」

「うん。私には正直ね、夢も目標も無い。ただ必死で自分を隠すことばかりに専念してる」

「なんで真中さんは真中さんを隠したいの」

「こういう性質だからだよ」

「性質、かぁ」
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