最低シンデレラ〜元カレ公爵様の唯一らしい〜
「さ、好きなものを好きなだけ頼んでくれ」

「水とはいきませんか」

「水だけで並のレストランの三倍は取られる。何を頼んでも変わらんと思うがね」

「承知しました。せいぜい、准将閣下、いえ、公爵閣下の財布を痛めることに専念いたします」

「よい心掛けだ、元少尉」

「嫌味ですか」

「元少尉は事実だろう」

 給仕が前菜をサーヴしていく。鴨のリエットにコルニッション、輪切りのバゲット。スープにはソラマメの冷製ポタージュ。銀のスプーンで掬ってひとたび口にしてみれば、滋味という他なかった。もう軍製乾パンには二度と戻れない身体にされてしまった。

 どうやらカイはエミリーの、旺盛に、それでも最低限行儀よく食べる様子を感心したようにしばらく観察していたが、やがて頃合いを計ったように話を切り出した。

「家を特定した」

「ローゼンの下町だとわかったのは、なぜ?」

「退役時の届出を准将権限で閲覧させてもらった。退役軍人の転居届は軍務省の記録に残る。俺は部下の記録の閲覧権を持っている。簡単なことだ」

「職権濫用では? 軍法違反すれすれの行為だと存じますが」

「うん、正解だ」

「気持ち悪い」

 彼がにこりと笑う。あまりにも舌打ちしたくなった。気持ち悪い。
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