最低シンデレラ〜元カレ公爵様の唯一らしい〜
「これも本題と言いたかったところだが、君に看破された以上は、話を変えよう」

 不毛な、否、不能な会話の間にも、彼はカップをすっかり空にしていた。またもう一杯、ウィスキー紅茶を作り始めながら彼は言う。

「職業斡旋をしにきた。王城の警備職に一つ空きがある」

「なるほど。『それを公爵名義で推薦してやろう、存分に感謝してくれたまえよ、元少尉』ですか」

「うん、それも正解だ」

「……気持ち悪い」

 この男はどこまで用意周到なのだ。

「王城の警備職なら、むしろ女性の君に適している。名誉ある近衛騎士隊への入隊。士官の最低である少尉ではなく、少佐からのスタートだ。どうだ、ガルデニエ少佐殿?」

「おべっかが上手いですね、元准将閣下? あなたも私と出会った頃はまだ大佐でしたね。あらやだ、未来の私よりすでに偉いだなんて。私に二階級特進でもしろと?」

 笑えない冗談をエミリーがぶつくさ物申したところで、彼はおかわりのウィスキー紅茶も飲み終えた。ソーサーにカップを下ろす。

「さて、話は決まったかな」

「決まりましたね、誘導尋問ですから」

 この男は、いつもそうなのだ。部下に選ばせるふりをして、実態は退路を全部塞いでから仕掛けている。戦場と同じなのだ、この男は。

「跡継ぎの方は?」

「仕方ないですね、やりますよ」

「……ふむ」

 ほっそりした顎に手を当てて、彼は何かを考えるそぶりになった。

「もう少し、君には肉を戻してもらわないと。立つものも立たなくなってしまう」

 その莫迦みたいなセリフに、エミリーも莫迦らしくなって、やけくそで答えた。

「うるさいっ。あなたお好みの言い方なら、『ヤってやりますよ』っ!」
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