最低シンデレラ〜元カレ公爵様の唯一らしい〜
 大戦が終結して半年。取得した退役年金はそう多くはない額で。王国が退役軍人に支払う年金よりも、戦災復興費と傷病者手当と遺族補償に充てたからで。生きている健康な人間は自分で稼げという意味に他ならなかった。すでに命を懸けて粉骨砕身で働いたというのに、なんともひどい話である。

 エミリーはその最前線にいた。常にいた。一番、人死にが起こる場所にいた。彼を一人にしておけなかったお人よしだったからか、それとも単純に人を殺すことが得意で居続けられたからなのか。どちらかは判断しかねるといったところだ。とにもかくにも、最前線で、彼の部下として、常に戦地を駆け続けた。

 その甲斐あってか、我が国が勝利して戦争が終わったから、人を殺さなくてもよくなったわけで。彼のそばにいる必要もなくなったわけだ。

 だから、彼に捨てられたわけではないのかもしれない。むしろ、自分の方が彼の隣という居場所を捨てたのだと思っている。まあ、エミリーが彼を捨てなかったとしても、彼はエミリーを躊躇なく捨てたことだったろう。彼はそういう人間だったはずだ。

 一度、彼が突出しすぎた味方を見捨てたことがあった。このままでは、戦線崩壊するからと。助けに行けば、味方の死傷をいたずらに増やすばかりだからと。

 それをエミリーは合理的だと思った。納得していた。反対に、この人は大多数の利益のために少数を簡単に見捨てられる、とてもひどい人なのだとも思った。

 だからこそ、彼を信頼できた。

 ひどい人間であれば、情を持たずにすむ。彼の咽喉に砲弾が直撃して首ごと吹っ飛んだとしても、悲しまなくてすむ。何より、自分も死なずにすむ大多数の方でいたい。そういう生存本能から、彼を優秀な指揮官だと認めていた。

 だからこそ、命を預けられた。
< 2 / 21 >

この作品をシェア

pagetop