最低シンデレラ〜元カレ公爵様の唯一らしい〜

第5話 不本意

 公爵邸は、もはや屋敷と言われるより、「城」と言われた方が納得できる敷地と建物を備えていた。

 広大な庭園は、カイ曰く、毎日早朝から庭師によって手入れされているとかで、池もあれば、噴水もある。薔薇園も、生垣の迷路も、菜園も、果樹園も。およそ庭園と聞いて思いつくものは全てあるようだった。

 庭園を巡る石畳の小道をまっすぐ行けば、突き当りに白亜造りの壮麗で大きな建物がある。これがアーベントロート公爵家の誇る居館で、裏側には使用人の寮も別にあるというから驚きだ。

 居館の玄関ホールには吹き抜けの天井からシャンデリアが当然のように吊られていた。レストラン〈二匹の野兎(ツヴァイ・ハーゼ)〉で見たものよりなお立派なものだった。これが公爵家の財力の一部だと思うと心が底冷えする。

 壮年の執事に出迎えられ、丁重にお辞儀をされて、執事の案内でこれまた広い応接間を通り抜け、ベルベットの敷かれた階段を上がって客間へとようやく辿り着く。

「ここが、君の部屋」

 五歩先を歩いていたカイが立ち止まって、彼自らが重厚な樫製の両開き扉を押し開けた。

「……え?」
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