最低シンデレラ〜元カレ公爵様の唯一らしい〜
第8話 贈賄収賄
彼は言った。
「これは合格祝いであって、決して贈賄収賄の類いではない。心して受け取られるように」
だから、エミリーは言った。
「世の中の贈賄収賄は往々にして『祝い金』だの『お菓子』だのと称して贈られるものなのですよ。……ご存じでしたか?」
「これは失礼。そうかそうか、知らなかったなあ。無知は人間の罪というが、俺は無垢といったところでな? 純粋な気持ちの贈り物を、世の中では真心という。およそ、俺は人の醜い感情とは切り離された環境で育ったものゆえ、こと品性感性において貴殿とは成り立ちが違うのかもしれない。いやはや、こいつは迂闊だった」
嘘つけ。
「では、あなたのおっしゃる『真心』を私が跳ね除けた場合、あなたは贈賄の罪を犯す懸念を限りなく減らせますわ。無垢な方には罪穢れにも無垢でいてもらいたいですもの。……ああ、めでたし、めでたし。めでたすぎて頭痛が痛いわ。今なら馬から落馬だってできそう」
「君は、たまに可愛くない」
「あなたのおっしゃる『可愛い』は、さしずめ『言いなりになる』の間違いでしょうね」
「では、今このとき俺の目論見通り、俺の言いなりになって反抗している君は、『可愛い』と言い換えて差し障りないわけだ。まこと、言葉の綾とは、便利なもの。人類の叡智、ここに極まれり」
「……っ」
むかつく。
「とにかく、遠慮は軍規違反だ」
「そんな軍規はございませんが」
「これまた失礼。たった今、元准将権限にて作成したもの」
わざとらしく肩をすくめる彼。
「立法権を私物化しないでいただきたい、元閣下!」
「今も公爵閣下だ。……ご存じだったろうか?」
ああ言えば、こう言う。この男は建設的な話が成り立たない。いや、話を成り立たせないのだ。
「うるさいっ、もういいっ」
「公私は混同してこそ、趣があるというもの……」
「あなたの公私には『公』がないんでしょうね! 私利私欲なんです!」
「利己的であるのは君の方では? もっと利他的に考えて、俺を喜ばせることもできように」
「うるさい!」
「これは合格祝いであって、決して贈賄収賄の類いではない。心して受け取られるように」
だから、エミリーは言った。
「世の中の贈賄収賄は往々にして『祝い金』だの『お菓子』だのと称して贈られるものなのですよ。……ご存じでしたか?」
「これは失礼。そうかそうか、知らなかったなあ。無知は人間の罪というが、俺は無垢といったところでな? 純粋な気持ちの贈り物を、世の中では真心という。およそ、俺は人の醜い感情とは切り離された環境で育ったものゆえ、こと品性感性において貴殿とは成り立ちが違うのかもしれない。いやはや、こいつは迂闊だった」
嘘つけ。
「では、あなたのおっしゃる『真心』を私が跳ね除けた場合、あなたは贈賄の罪を犯す懸念を限りなく減らせますわ。無垢な方には罪穢れにも無垢でいてもらいたいですもの。……ああ、めでたし、めでたし。めでたすぎて頭痛が痛いわ。今なら馬から落馬だってできそう」
「君は、たまに可愛くない」
「あなたのおっしゃる『可愛い』は、さしずめ『言いなりになる』の間違いでしょうね」
「では、今このとき俺の目論見通り、俺の言いなりになって反抗している君は、『可愛い』と言い換えて差し障りないわけだ。まこと、言葉の綾とは、便利なもの。人類の叡智、ここに極まれり」
「……っ」
むかつく。
「とにかく、遠慮は軍規違反だ」
「そんな軍規はございませんが」
「これまた失礼。たった今、元准将権限にて作成したもの」
わざとらしく肩をすくめる彼。
「立法権を私物化しないでいただきたい、元閣下!」
「今も公爵閣下だ。……ご存じだったろうか?」
ああ言えば、こう言う。この男は建設的な話が成り立たない。いや、話を成り立たせないのだ。
「うるさいっ、もういいっ」
「公私は混同してこそ、趣があるというもの……」
「あなたの公私には『公』がないんでしょうね! 私利私欲なんです!」
「利己的であるのは君の方では? もっと利他的に考えて、俺を喜ばせることもできように」
「うるさい!」