最低シンデレラ〜元カレ公爵様の唯一らしい〜
合格祝いと称した外出は、つまるところなんでもいいから、デートだった。デートという単語を使用することにすら躊躇が発生するが、客観的事実として、アーベントロート公カイと、その食客エミリー・ガルデニエ少佐は連れ立って王都ローゼン中央区の大通りを歩いている。
春の陽射しが街路樹を通り抜けて木漏れ日を作り出し、カイの紅い髪をちらほらと照らす。その光景を別に美しいとは思わないが、なぜか見ていたくなることには間違いなかった。
エミリーの方はといえば、公爵家の侍女に「お似合いですわ、きっと旦那様がお喜びになりますっ」と見立ててもらったブルーグレーのワンピースを着ている。借り物だ。これが借り物競争なら一等賞だ。なんだろう、長靴を履いて深い水溜まりを踏みぬいた気分だ。
カイはいつになく上機嫌だった。フロックコートの代わりにツイードジャケットを羽織る姿がやけに堂に入っている。鍛えられた長身が相まって、すれ違い行き違うご婦人たちの視線が刺さるし痛いしで、鬱陶しいことこの上なかった。
「ほら、君の宣う贈賄だ。好きなものを選びなさい」
彼はそう言うが。
「やっと贈賄と認めましたね」
としか返答できなかった。
「君の好きなものだ、エミリー。……なに、タダで済むなら俺そのものをプレゼントにしてくれたっていい。このところ、財布が紙幣のフィアンセと生き別れになるのを嘆いていてな」
「ならば、公爵閣下のフィアンセは、私ではなく財布に代わってもらいましょうかね」
「ここ半年の俺は、買い出しを使用人に任せてばっかりだった。外出先が減るというのは寂しいものだ。だからエミリー、俺の寂しさを癒してくれ」
「あなたが真っ先に癒すべきなのは、頭の構造です」
春の陽射しが街路樹を通り抜けて木漏れ日を作り出し、カイの紅い髪をちらほらと照らす。その光景を別に美しいとは思わないが、なぜか見ていたくなることには間違いなかった。
エミリーの方はといえば、公爵家の侍女に「お似合いですわ、きっと旦那様がお喜びになりますっ」と見立ててもらったブルーグレーのワンピースを着ている。借り物だ。これが借り物競争なら一等賞だ。なんだろう、長靴を履いて深い水溜まりを踏みぬいた気分だ。
カイはいつになく上機嫌だった。フロックコートの代わりにツイードジャケットを羽織る姿がやけに堂に入っている。鍛えられた長身が相まって、すれ違い行き違うご婦人たちの視線が刺さるし痛いしで、鬱陶しいことこの上なかった。
「ほら、君の宣う贈賄だ。好きなものを選びなさい」
彼はそう言うが。
「やっと贈賄と認めましたね」
としか返答できなかった。
「君の好きなものだ、エミリー。……なに、タダで済むなら俺そのものをプレゼントにしてくれたっていい。このところ、財布が紙幣のフィアンセと生き別れになるのを嘆いていてな」
「ならば、公爵閣下のフィアンセは、私ではなく財布に代わってもらいましょうかね」
「ここ半年の俺は、買い出しを使用人に任せてばっかりだった。外出先が減るというのは寂しいものだ。だからエミリー、俺の寂しさを癒してくれ」
「あなたが真っ先に癒すべきなのは、頭の構造です」