最低シンデレラ〜元カレ公爵様の唯一らしい〜
第9話 女性士官
アンシャル砦は三方を山岳に囲まれた天然の要害でもあった。東方国境を鎮護する最重要拠点の一つと言えば聞こえがいいが、実態は老朽化と予算の縮小により、砦という名を冠した砂上の楼閣にすぎない。
第五遊撃連隊〈白鳥〉に新任の女性士官。それは、カイ・アーベントロート大佐がアンシャル砦着任以来で初めてのことだったので、単純に、ああ、珍しいことだ、と思った。
カイの副官をずっと務めているヴァルター・シュネーリヒト中尉は、銀髪痩躯に眼鏡をかけた貴公子然の優男で、カイと比較すると吹けば飛ぶようだった。そのシュネーリヒトが聞いたら複雑な顔をしそうなものだが、〈白鳥〉連隊の中では、彼がかろうじて女性のように華奢でしなやかな身体つきをしているくらいか。
結論として、ここアンシャルには女性士官がいないということだった。
その軍務省人事課が正式人事通知の封書を送って寄越したのが九月の初め。王国一頭竜の紋が描かれた官製封筒だ。シュネーリヒトから手渡された封書をカイはペーパーナイフで無造作に開けた。
『士官幼年学校第一〇五期卒エミリー・ガルデニエ少尉を王国陸軍第五遊撃連隊、通称〈白鳥〉連隊へ配属とす。連隊長カイ・アーベントロート大佐におかれては、その旨、留め置かれたし。』
「十六歳。座学は130名中23位、射撃実技が首席、元孤児で身寄りなし……ね」
ああ、どうりで遊撃連隊に配属されるわけだ、と思った。
第五遊撃連隊〈白鳥〉に新任の女性士官。それは、カイ・アーベントロート大佐がアンシャル砦着任以来で初めてのことだったので、単純に、ああ、珍しいことだ、と思った。
カイの副官をずっと務めているヴァルター・シュネーリヒト中尉は、銀髪痩躯に眼鏡をかけた貴公子然の優男で、カイと比較すると吹けば飛ぶようだった。そのシュネーリヒトが聞いたら複雑な顔をしそうなものだが、〈白鳥〉連隊の中では、彼がかろうじて女性のように華奢でしなやかな身体つきをしているくらいか。
結論として、ここアンシャルには女性士官がいないということだった。
その軍務省人事課が正式人事通知の封書を送って寄越したのが九月の初め。王国一頭竜の紋が描かれた官製封筒だ。シュネーリヒトから手渡された封書をカイはペーパーナイフで無造作に開けた。
『士官幼年学校第一〇五期卒エミリー・ガルデニエ少尉を王国陸軍第五遊撃連隊、通称〈白鳥〉連隊へ配属とす。連隊長カイ・アーベントロート大佐におかれては、その旨、留め置かれたし。』
「十六歳。座学は130名中23位、射撃実技が首席、元孤児で身寄りなし……ね」
ああ、どうりで遊撃連隊に配属されるわけだ、と思った。