最低シンデレラ〜元カレ公爵様の唯一らしい〜

序章3 白鳥の巣

 幼年学校での五年間はあっという間だった。

 クラウスじいさんのパン屋で培った早起きの習慣はさっそく役に立った。朝五時の起床ラッパが鳴る前にはすでに身支度を整え、朝のストレッチなんかを優雅に始める暇さえあった。読み書き計算もやっていたおかげで座学にもなんとかついていけた。座学の成績は中の上。

 軍学校のよいところは、飯にありつけることだった。

 この幼年学校の運営資金は国費から賄われていて、孤児に限り、入学すれば学費はタダだった。それを目当てに孤児がやってくるのは常態と化していて、中には孤児院から売られた子供もいるようだった。どういうことかというと、子供を幼年学校に入学させる代わりに孤児院にお金が支払われるという、ひどい仕組みだった。身売りの斡旋業者か何かかと突っ込みたくもなるが、これも当たり前のことだったのだろう。

 平民は兵卒の下士官にしかなれないが、平民でも幼年学校を卒業さえすれば、貴族と同じ士官待遇から始められる。唯一平民が貴族と対等になれる抜け穴のような場所であった。人生を軍に捧げた対価にエリートコースが約束されるというわけだ。

 だからほとんどは経歴に箔をつけたいという貴族や裕福な商家の子弟ばかりで、エミリーのような雑草はそれだけで異物のようなものだった。

 流石にクラウスじいさんの焼いたパンとはいかないが、食べられる形をしたパンと具の入ったスープがきちんと出てきた。休日には肉が出て、ガキどもの取り合いになっていた。野良犬とパン耳を奪い合っていた経験は確かにエミリーを強くしていたようで、貴族や豪商のボンボンから騙して掠め取るのは上手かったと自負がある。要は生存競争の場が路地裏から教室に変わっただけのこと。
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