子供は作らない契約結婚でしたが夫の溺愛が本気すぎます
新生活は、渉君の家で始まった。

「自分の家だと思って、楽に過ごせばいい」

そう言って、渉君は当たり前のように私を迎え入れてくれた。

その言葉に、胸の奥がじんわりと温かくなる。

引っ越してからの日々は、驚くほど楽しかった。

渉君は必要なものを、迷いなく揃えていく。

二人で眠るベッドも、並んで座るソファも、食器棚に並ぶお皿も、すべてが二人分だった。

少しずつ家の中が“私たちの暮らし”に変わっていくのが嬉しくて、何度も部屋を見回してしまう。

「未知の好きなようにしていいんだよ」

そう言って笑う渉君は、何も変わらない。

昔と同じ、優しいお兄さんのままだった。

夫になったはずなのに、距離はどこか穏やかで、安心できる。

それでも私は、その優しさの中に身を置けることが、たまらなく幸せだった。

私にとって渉君は、昔からずっと、特別な人なのだから。
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