娘のパパと再会したら今度こそ逃げられません
入社して約四年。蓮斗は父が社長として采配を振る姿や社員から寄せられる圧倒的な信頼に触れるたび、早く追いつかなければと気持ちを新たにしてきた。

大企業を率いる有能な社長として、父を尊敬し目標にしているのだ。

「といっても、仕事だけ……の人なんだよな」

社長室がある十八階でエレベーターを降りながら、蓮斗は眉を寄せ肩をすくめた。

安西製薬の創業家に生まれた蓮斗の父は、子どもの頃から後継者として厳しく育てられ、なにを置いても会社の発展のために力を尽くすよう言い聞かされてきたらしい。

すでに父の両親、つまり蓮斗の祖父母は亡くなっていて彼らの教育方針や父の幼少期を知る術はないが、母から聞いた話では〝家に縛られ続けている不憫な人〟だそうだ。

蓮斗が一歳の時に両親は離婚し、二十年以上顔を合わせたことはなかった。

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