娘のパパと再会したら今度こそ逃げられません
単なるスローガンで終わらせずそれを実践するために、分刻みのスケジュールをこなしている父の姿は超大企業のトップ然としていて、蓮斗の気持ちを変えるほどカッコよく、尊敬するには十分だった。

まさにそのタイミングで杏奈から別れを告げられ、彼女は姿を消した。

その後、蓮斗は悩んだ末に父の後継者として安西製薬に入社することを決めた。

弁護士の仕事に未練はあったが、安西製薬の薬によって生かされている患者の力になりたいと願い、そう決めたのだ。

杏奈が別れを切り出すきっかけを作ったのが、父だと知らないまま――。

「それより、話ってなんですか?」

ふと頭に浮かんだ〝今さら〟を脇に押しやり、蓮斗は軽く首を振った。

杏奈から打ち明けられた父の所業を思い出すだけでやるせなく、気づけずにいた自分が情けなくなるが、だからこそ今、父と向き合わなければと、気持ちを引きしめた。

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