娘のパパと再会したら今度こそ逃げられません
「蓮斗さん?」
「顔見知りかなにか?」
「……は、はい」
心配している店長に、杏奈は動揺がばれないよう笑顔を向けた。
「昔の知り合いです」
幼稚園で再会したあの日以来、思い出さない日はなかった。
園長の息子ならいずれ幼稚園で顔を合わせるかもしれないと覚悟していたが、わざわざ店にやってきたのだろうか。
『もう、逃がすつもりはないから』
強い視線と迷いのない声を思い出して、心臓がばくばくと音を立て始めた。
「いらっしゃいませ」
広い店内の最奥のテーブルに、杏奈は手もとが震えそうになるのをこらえながら水が入ったグラスを置いた。
今日は休みだとアルバイトの女の子に伝えてもらおうかと一瞬考えたが、勤務先が知られている以上また訪ねてくるはずだ。
だったら店に迷惑をかけないためにも会っておいた方がいい。