娘のパパと再会したら今度こそ逃げられません
なのに杏奈はコーヒーが飲めず、バイト仲間からよくいじられていたのだ。

「でも……妊娠して」

視界の隅で、蓮斗が息をのんだのがわかる。

「好みが変わって、コーヒーをおいしく飲めるようになったんです」

ひと息にそう言って、膝の上に置いていた手を強く握りしめた。

ここに来るまで妊娠や朱音の話をどう話せばいいのか悩んでいたが、とっさに話の流れにのって切り出した。

「妊娠中はカフェインレスばかり飲んでいたんですけど、それ以来のコーヒー派です。食の好みも変わって、自分でもびっくりしました」

「妊娠中……」

蓮斗は杏奈をまじまじと見つめている。

今日こうして会っている理由でもある話題を、杏奈がいきなり持ちだしたのだ。驚くのも無理はない。

「朱音を妊娠していた時です」
 
杏奈はつい目を逸らしそうになるのを我慢し、話を続けた。

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