こもれび日和
夕食のあとは、
奏が世界を旅した写真を見せてくれたり、
純がキッチンカーの秘密レシピを教えてくれたり。

歩と直は眠くなるまで騒ぎ、
蘭はその寝顔を見守りながら、
ヒバリ村の夜の静けさを胸いっぱいに味わった。


夜中の2時。
歩はふと目を覚ました。
あたりは真っ暗。見慣れない天井。知らない家の匂い。

胸の奥がぎゅっと縮まる。

「……直……」
隣で寝ている双子の弟の背中を、小さくつつく。

「ん……なぁに……?」
まだ眠たそうな直が目をこすった。

「トイレ……行きたいけど……ひとりじゃこわい」

直は少しムッとした顔をしたが、
兄の困った顔を見るとすぐに布団からむくりと起きた。

「じゃあいっしょに行く……手、つなぐ?」

歩はこくりとうなずく。

ふたりは小さな懐中電灯を持ち、
そっと廊下へ出ていった。


古い家の廊下は、夜になるとどこか心細い。
床板がギシッと鳴るたびに、歩はビクッとなる。

「おばけ、いないよね……?」
「いないよ。いたら、ぼくがやっつける」
と直は寝ぼけ声で勇ましいことを言う。

なんとかトイレを済ませると、
ほっとするように深呼吸した。

「帰ろう……」
と歩が言いかけた時だった。


廊下の突き当たり。
障子の向こうだけ、ぽうっと明かりが漏れている。

「……まだ、おとな起きてる」
直がひそひそ声で言う。
< 102 / 149 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop