こもれび日和

冒険だ

風が少しだけ冷たくなり、
コモレビ村のあちこちでは十五夜の飾りつけが始まっていた。
軒先にはススキが飾られ、スーパーには白くて丸いお団子が並びはじめ、
村はなんとなく“お月見ムード”に包まれていた。


保育園の帰り道。
夕焼けの下、歩と直はいつものように手をつないで歩いていた……はずだった。

「お月さまには、ウサギいるんだよ!」
歩が胸を張る。

「いないよ!」
直がむすっと顔をしかめた。

「だって、お団子つくってるんだよ!?
せんせいも“むかしばなしに出てくる”って言ってた!」

「“むかしばなし”でしょ?ほんとはいない!」
直は負けず嫌いで声を張る。

歩は顔を真っ赤にして叫んだ。

「いるもん!!」

「いない!!」

とうとう二人は腕を振り払って、
別々の方向へ歩こうとしてしまった。

蘭は慌ててふたりの間に入った。

「こらこら、ケンカしないの。
月にウサギさんが『いる』と思ってもいいし、
『いない』と思ってもいいの。
仲良く帰ろう?」

それでもふたりはプイッとそっぽを向いたまま、
その日はぎこちないまま帰宅した。
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