こもれび日和
そこに立っていたのは、奇妙な帽子をかぶった若い男。
胸には「訪問販売 小鳥遊 龍」と書かれた名札。

「えーと……おとなの人、いる?」
歩が慎重に尋ねる。

「いないのかぁ〜。じゃあ今日は見るだけでOK!
ほら、びっくりするよ!」


男はにこっと笑うと、
大きなカバンをパッと開いた。

すると――

ポンッ!

キラキラのスパイス瓶が宙に跳ね上がり、
次々と空中からフライパンや計量スプーンが出てきた。

「わぁぁぁーーっ!!」
歩と直も思わず身を乗り出した。

「これは“自動で焦げつきにくいフライパン”!」
男はクルッと回し、まるで手品のように扱う。

「こっちは“ふりかけるだけで肉じゃがが上手くなる魔法のスパイス”!」

パッと一振りすると、ふわりと良い香り。

怪しい……
でも、すっごく面白い。

歩も直も、夢中になってしまった。

「おじちゃん、手品師なの?」
直がきらきらの目で聞いた。

男は胸を張って答えた。

「もちろん!料理の手品師さ!」
と、言いながらスプーンを耳の裏から取り出してみせる。
歩は笑い転げた。

「すごい!もういちどやって!」
「いいよ!ほらっ!」

家の前の玄関先は一気にサーカス会場のようになった。
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