こもれび日和
「歩くんが、となりにいてくれて、
直くんの手、ぎゅってにぎってくれてさ……
わたし、あのとき“この家族のところに来てよかったな”って思ったんだ」
ユイの声は、少しだけ震えていたけれど、
その目は真っすぐだった。
歩は、手に持っていたクッキーを見つめた。
「ぼくも……ユイちゃんがいてくれてよかった。
たのしいときも、こわいときも、いつもいっしょだったから」
言いながら、胸の奥がじんとあたたかくなる。
しばらく、ふたりは黙って、
川の流れる音を聞きながら、サンドイッチやおにぎりを食べた。
鳥の声。
水の音。
ときどき、風がふわっと髪を揺らす。
なんでもない時間なのに、
不思議とひとつひとつが、ジンの心に焼きついていく。
クッキーを半分こして食べ終えたころ。
ぽつん。
ユイの頬に、小さな冷たいものが当たった。
「……あれ?」
ぽつ、ぽつ、ぽつ――。
「雨だ!」
歩が空を見上げると、
灰色の雲がゆっくり流れてきていた。
「わあ、どうしよう! ぬれちゃう!」
ユイが慌ててバスケットを抱える。
「歩くん、こっち!」
少し離れたところに、小さな東屋があった。
ふたりはシートを抱えて、
バタバタと駆け込んだ。
ミハルも慌ててベンチから走ってきて、
東屋の隅から顔を出す。
「大丈夫? 風邪ひかないようにね」
「だいじょうぶー!」
歩とユイは顔を見合わせて笑った。
雨はざぁっ、と強くなったかと思うと、
すぐに音を弱めていった。
「……なんか、ないちゃってるみたいな雨だね」
ユイがぽつりとつぶやく。
「だれが?」
「んー……歩くんとか、わたしとか、かな」
歩はびくっとして、少し目を丸くした。
「べつに、な、泣いてなんか……」
そう言いかけたところで、
ユイはにこっと笑った。
「うん。泣いてなくてもいいんだよ。
でも、ちょっとさみしい気持ちは、おそろいだねってこと」
静かな雨の音にまぎれるように、
ふたりは並んで座り、
しばらく空を見ていた。
やがて――
雨粒の音が、ふっと消えた。
「止んだ?」
ユイが立ち上がる。歩も一緒に外へ出た。
さっきまで灰色だった空が、
少しずつ明るくなっていく。
雲の切れ間から、
まぶしい光がのぞいた。
そして――
「わぁぁぁぁっ!!」
川の向こうの空に、
大きな、大きな虹がかかっていた。
赤、オレンジ、黄色、緑、青、藍、紫。
すべての色が、震えるようにきれいで、
今にもこぼれ落ちそうなほど鮮やかだった。
直くんの手、ぎゅってにぎってくれてさ……
わたし、あのとき“この家族のところに来てよかったな”って思ったんだ」
ユイの声は、少しだけ震えていたけれど、
その目は真っすぐだった。
歩は、手に持っていたクッキーを見つめた。
「ぼくも……ユイちゃんがいてくれてよかった。
たのしいときも、こわいときも、いつもいっしょだったから」
言いながら、胸の奥がじんとあたたかくなる。
しばらく、ふたりは黙って、
川の流れる音を聞きながら、サンドイッチやおにぎりを食べた。
鳥の声。
水の音。
ときどき、風がふわっと髪を揺らす。
なんでもない時間なのに、
不思議とひとつひとつが、ジンの心に焼きついていく。
クッキーを半分こして食べ終えたころ。
ぽつん。
ユイの頬に、小さな冷たいものが当たった。
「……あれ?」
ぽつ、ぽつ、ぽつ――。
「雨だ!」
歩が空を見上げると、
灰色の雲がゆっくり流れてきていた。
「わあ、どうしよう! ぬれちゃう!」
ユイが慌ててバスケットを抱える。
「歩くん、こっち!」
少し離れたところに、小さな東屋があった。
ふたりはシートを抱えて、
バタバタと駆け込んだ。
ミハルも慌ててベンチから走ってきて、
東屋の隅から顔を出す。
「大丈夫? 風邪ひかないようにね」
「だいじょうぶー!」
歩とユイは顔を見合わせて笑った。
雨はざぁっ、と強くなったかと思うと、
すぐに音を弱めていった。
「……なんか、ないちゃってるみたいな雨だね」
ユイがぽつりとつぶやく。
「だれが?」
「んー……歩くんとか、わたしとか、かな」
歩はびくっとして、少し目を丸くした。
「べつに、な、泣いてなんか……」
そう言いかけたところで、
ユイはにこっと笑った。
「うん。泣いてなくてもいいんだよ。
でも、ちょっとさみしい気持ちは、おそろいだねってこと」
静かな雨の音にまぎれるように、
ふたりは並んで座り、
しばらく空を見ていた。
やがて――
雨粒の音が、ふっと消えた。
「止んだ?」
ユイが立ち上がる。歩も一緒に外へ出た。
さっきまで灰色だった空が、
少しずつ明るくなっていく。
雲の切れ間から、
まぶしい光がのぞいた。
そして――
「わぁぁぁぁっ!!」
川の向こうの空に、
大きな、大きな虹がかかっていた。
赤、オレンジ、黄色、緑、青、藍、紫。
すべての色が、震えるようにきれいで、
今にもこぼれ落ちそうなほど鮮やかだった。