こもれび日和
歩はおもちゃのマイクをぎゅっと握って、
少し緊張した顔をしている。

直は、後ろでちょこんと立ちながら、
でも目だけはキラキラしていた。

舞台袖から、サクラ先生の「がんばって」の声。

ホールの隅では、
蘭がドキドキしながらビデオカメラを構え、
律が小さくガッツポーズをしている。


青春パンクロック、はじまる

スピーカーから、勢いのあるドラムとギターの音が流れ始めた。

それは、
蘭の父・蔵之介が
大学生だったころに流行した、
“青春パンクロック”の曲。

蔵之介がお正月に
「こんな曲を若いころよく歌ったんだ」と口ずさんでいて、
それを聞いた歩が「うたってみたい!」と言い出し、
今回の出し物になったのだった。

イントロが終わり――

歩が、一歩前に出た。

マイクを握りしめ、
お腹からいっぱい声を出す。


ちょっと音程はあやしい。
リズムもところどころ走る。

でも――とにかく元気だ。
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