こもれび日和
直横で、
合いの手のように「オー!」と声を上げたり、
サビの一部を一緒に歌ったりする。

拳をつき上げる仕草も、蔵之介直伝。


だんだん広がる、歌の輪

最初はぽかんとしていた園児たちも、
サビが二回目に入るころには、
身体を揺らし始めていた。


歩の声に重なるように、
直も少し大きめの声で歌い出す。

ホールの後ろの方で、
トモが立ち上がった。

「おれも、うたえるー!」

その隣で、マキもユイも、
歌詞カードなしなのに、
耳で覚えたフレーズを一緒にくちずさみ始める。

サクラ先生が、
「じゃあ、みんなもいっしょに歌おうか!」と声をかけた。

先生たちも、
こっそり手拍子で参戦する。

さびに入る三回目には――

園児たちの声が、
歩と直の歌に重なっていった。


手拍子が鳴り、
足でリズムをとる子も出てきた。

一緒に揺れる先生たち。
笑いながら、手拍子をする保護者たち。

ホールの空気は、
いつのまにか小さな“ライブハウス”になっていた。


ユイ、笑いながら泣く

歌の間中、
ユイはずっと歩を見つめていた。

革ジャンを着て、
声を枯らしながら歌う歩。

ちょっと照れた顔で、
懸命に声を合わせる直。

(歩くん……)

(わたしのために……こんなに一生懸命……)

胸の奥が、きゅっと締め付けられる。
でも、同時にあたたかくて、くすぐったい。

最後のサビ。

歩が、
マイクを握る手に力をこめて叫ぶように歌う。


蔵之介がむかし何気なく歌っていたフレーズを、
歩は間違えないように、
何度も何度も家で練習していた。

その言葉が、
まっすぐユイの心に飛び込んでくる。

ユイは、
気づいたら涙がぽろぽろとこぼれていた。

でも、
手で拭っても拭っても、
口元には“笑顔”が残ったままだった。

笑いながら泣いているユイを見て、
サクラ先生も目を潤ませる。

客席にいたミハルも、
ハンカチでそっと目を押さえていた。

大合唱と、大きな拍手

最後の音が鳴り終わると、
ホールはしん、と一瞬静かになって――

次の瞬間、
割れんばかりの拍手がわき起こった。

「歩くん、かっこよかったー!!」
「直くんもー!!」
「すごいライブだったわねぇ」と、保護者の声。

歩は息を切らしながら、直と顔を見合わせ、
「やりきった……!」というように笑った。

革ジャンの中は汗びっしょりだった。

サクラ先生がマイクを持つ。

「ありがとう。
 とっても素敵なライブでした!」

そして、ユイに向き直る
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