こもれび日和
翌朝。まだ太陽が昇りきらない時間から、春夏秋冬家の台所には慌ただしい音が響いていた。

 「律さん、卵焼きはできた?」
 「おう! 甘いのとしょっぱいの、二種類完成!」
 「すごいけど……お皿、多すぎじゃない?」
 「初日くらいは豪華にしようと思ってさ!」

 テーブルには、おにぎり、みそ汁、卵焼き、ほうれん草のごま和え、鶏の唐揚げ、筑前煮、果物まで並んでいく。朝から小さなバイキングのような光景になり、蘭は思わず笑った。
 「二人、びっくりしちゃうかもね」
 「それならそれでいいさ。うちに来て“おいしい”って笑ってくれたら」

 居間では、昨夜きれいに整えた子ども部屋を蘭が最終チェックしていた。布団のしわを直し、ぬいぐるみを一つずつ整える。
 「……よし。これで大丈夫」
 けれど、心臓の鼓動は落ち着かない。

 窓から差し込む朝日を見ながら、蘭は小さくつぶやいた。
 「本当に、うまくやっていけるかしら……」

 その声を聞きつけた律が、エプロン姿のまま部屋に入ってきた。
 「大丈夫だって。緊張してるのは俺も同じだ」
 そう言いながらも、律の手は少し震えていた。

 二人はしばらく黙って顔を見合わせ、同時に小さく笑った。
 「……結局、私たちそろってドキドキしてるのね」
 「まあ、人生で一番大事な日だからな」

 時計の針は、迎えの時間が近づいていることを告げていた。
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