こもれび日和
それに気づいた律は、手を合わせて見せた。
 「こうやってな、ごはんを食べる前に“いただきます”って言うんだ」
 蘭も横でやさしく声をそろえる。
 「ごはんを作ってくれた人や、食材にありがとうって気持ちを伝える言葉なのよ」

 歩と直は顔を見合わせ、少し照れくさそうに手を合わせた。
 「……いただきます」

 声は小さかったけれど、その瞬間、部屋の空気があたたかくなった。
 律と蘭は思わず顔を見合わせ、胸の奥がじんわり熱くなる。

 「はい、どうぞ」
 蘭が声をかけると、歩はおにぎりを一口かじり、目を丸くした。
 「おいしい!」
 直も卵焼きを食べて、にっこり笑った。
 「ふわふわだ!」

 その笑顔を見て、律は心の中でつぶやいた。
 ――これから毎日、この言葉を一緒に言えるんだな。

 その日の朝、歩と直が初めて口にした「いただきます」は、春夏秋冬家にとって新しい家族の証になった。

< 77 / 149 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop