こもれび日和
「そのときね、“やけたよー!”って、においがしたら、ぼく、いっしょうけんめいはしって、ママのところにいったの……」

声がかすれて、唇が震える。

「……ママのにおいだった……」

その瞬間、歩の目からぽろりと涙が落ちた。

そして、小さな手で顔を隠すようにして、泣き始めた。


蘭は、なにも言わずに歩の隣に座った。

やさしく背中をなでる。なでるたび、歩の肩がふるえる。

律も、静かに手に持っていたマグカップをテーブルに置き、歩の隣に腰を下ろした。

直は、そっと歩の手を握った。

「……ぼくも、たまに思い出すよ。ママのこと。……さみしいよね」

歩はうなずく。

「うん……さみしい」

しばらく、みんなで静かに座っていた。

風がやさしく縁側を通り抜け、マフィンの香りをもう一度、ふんわりと運んできた。

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