こもれび日和
一息つくと、蔵之介は持ってきた紙袋をそっと掲げる。

「……その、昔からこのオムライスだけは家族に評判でな。
よかったら……孫たちに作らせてもらえんか?」

蘭は思わず胸が熱くなった。

「お父さん……!」

律もすぐに頷く。

「ぜひお願いします!」

蔵之介は台所に入り、
慣れた手つきでフライパンを温めた。



バターの香りが家中に広がる。

「たまねぎはゆっくり炒めるのがコツなんだ」
「わぁ〜! いいにおい!」
「おじいちゃん、たまごまぜるー!」

歩がボウルを持って跳ね、
直は小さなスプーンでコーンをこぼしそうになって慌てる。

蔵之介は最初こそぎこちなかったが、
ふたりが笑うたびに顔つきがやわらかくなった。

やがて——。

トロッ、とろける卵に包まれた、まるいオムライスが完成。
ケチャップで「A」と「N」とイニシャルも描かれている。
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