シェヘラザードに捧げる物語
誠太郎くんの顔は穏やかなままだ。
鋭い眼差しには穏やかな光が見え隠れして、私を包み込もうとしているようだった。
「ひどいな」
「……っ!」
開口一番、こちらを非難する物言いに唇をかむ。
……これはもう、そういうことなんだろう。
出会って、拙い行き違いがあって、再会して、またすれ違って、結ばれて。
そして最後には別れて。
恋人でいられたのは短い時間だったけど、幸せだった。
「大賀くん、今まで──」
「俺が諦められないのを知ってて言ってるなら、本当にひどい奴だ」
意味がすぐには理解できなくて、目元を手のひらで覆ってしまった彼を黙って見つめる。
「俺も救えないな……仕事のほうが大事って言われてもまだ好きなんだ」
「それは」
「むしろ、そういうところが好きだよ」
誠太郎くんは顔をくしゃくしゃにしたまま、「降参」とでも言うように両手を挙げた。