この度、元副総長さまが会社の先輩になりまして。
とりあえずサラダと簡単なおつまみ系は先にオーダーしておいたからすぐに来ると思うよ、あとは追加で勝手に頼んでいいからね、と日下さんに最初に言われたとおり、そこからは次から次へとテーブルに料理が運ばれてくる。
お酌とかぜったいにしなくていいからね、と釘を刺されたけれど、そうは言ってもそれってどうなの? ってなんだかんだでそわそわしていると、そんな心配をよそに、日下さんが私といろはのあいだに割って入ってきた。
「そういえば南さんと卜部さんは今日一緒に来てたみたいだけど、もともと友達なの? 大学同じだっけ? あ私、人事部の日下です、どうもどうも」
この数分間で、日下さんの自己紹介を何度聞いただろう。
どうもどうも、と日下さんに合わせて言いそうになるのをぐっと堪えて、私といろはは日下さんの手に持つビールジョッキに、自分たちのジョッキをこつんとぶつけた。
日下さんの振る舞いを見ていると、たぶんほんとうにお酌とかしなくていいんだろうな、しようものなら怒られるまであるな、と思わせるほどのラフっぷりだ。
「大学は別なんですけど、就活中に仲良くなったんですよ」
「へえ!? そんなことあんだね、卜部さん陽キャ代表って感じだもんね、あれっ、こういうこと言うのってもしかしてパワハラ?」
会話を近くで聞いていた別の先輩社員が、「日下ぁ、人事がパワハラしてちゃ救えねえぞ」って茶化す。日下さんは親指を下に突き出して「GO TO HELL!」と世界一救えない暴言を吐いた。
「でもうちって、基本みなさん陽キャじゃないですか? THE・広告代理店っていうか。平均年齢も若いし」
「あ、バレてる〜?」
「ところで弊社、地獄なんですか?」
「ああっ、南さん、私の失言を掘り起こさないで、っていうか待って、前言撤回するわ、だって今思うと別に地獄じゃないわ、部署ガチャ次第だし!」
「部署ガチャ」
部署ガチャて! と、誰かがもう一度リピートするように笑って、会話がひと盛り上がりしたそのときだった。
「っまじ! で! 遅れてすみませんっ!」